中小企業診断士ストレート合格体験記(後編)

概要

2018年頭から中小企業診断士の勉強を始めて、一年間で一次試験、二次試験ともにストレートで合格できたのでその体験談と勉強方法などをまとめてみます。
後編は二次試験についての内容になります。
一次試験についてはこちら。

 

km1983.hatenablog.jp

 

 

目次

・筆者情報
・勉強方法(筆記試験)
・答案作成方法(筆記試験)
・直前期の過ごし方(筆記試験)
・勉強方法(口述試験
・各事例ごとの改善案(口述試験
・最後に

 

筆者情報

30代サラリーマン。既婚。
ソフトウェア開発会社で管理業務やプロジェクトマネジメントを行っています。

勉強開始時期は2018年1月初旬。
利用した資格学校はTAC。
2018年度一次試験合格(初受験)
2018年度二次試験合格(初受験)

 

勉強方法(筆記試験)

2次試験向け勉強時間はおよそ200時間。

単語カードを使って知識の整理をすることは一次試験と同様ですが、整理の仕方が変わってきます。
全体に関することと、事例ごとに関することで分類します。
また、裏表両方を必ずしも使うわけではなく片面しか使わないことも多々あります。

 

過去問については5年分あったのですが、全部はできませんでした。
まとまった時間があまりとれなかったことと、解くよりも解き方をブラッシュアップしていくことの方が重要だと判断したためです。
その分、毎週の演習は全力でやり、毎回「どうしたら安定して点が取れるか」を考えながら自分なりに答案の型をつくっていきました。
その演習でよい点をとることよりも、その演習を通じてよい解き方を身につけることが重要だと思います。
最初の頃は解き方が毎回コロコロ変わっていたので得点も安定しませんでしたが、最後の方は自分なり解き方の手順ができてきて得点のブレが少なくなっていきました。

 

事例4については現役生と浪人生で差がつくところと聞いていたので、数をこなすために問題集「2018年改訂版 30日完成!事例IV合格点突破 計算問題集」を追加しました。

 

2018年改訂版 30日完成!事例IV合格点突破 計算問題集

2018年改訂版 30日完成!事例IV合格点突破 計算問題集

 

 

また、「ふぞろいな合格答案」や他の学校の過去問模範解答にも目を通しました。

 

ふぞろいな合格答案 10年データブック

ふぞろいな合格答案 10年データブック

 

理由としては、TACの模範解答が本当に妥当なのか確認したかったためです。

 

マークシートとは違い記述試験では観点や考え方がいろいろあると思いますので、比較しておくことは必要だと思います。
結果として、TACのはだいぶ考えられた解答だなと思いました。
一方で、限られた時間内でそこまで書くのは不可能だなとも感じました。
模範解答を目指しつつも、模範解答の6割くらい書けていたらいいんじゃないかという気持ちで勉強していました。

その他の勉強法として、私はやっていませんでしたが、iPadを使っている人もいました。
演習の答案をカメラで撮影して、ペンで記入したりなど。
直前にパラパラと読み返すのにはいいのではないかと思いましたが、私の場合は単語カードにまとめていたこともあり、あまり個別の演習結果を繰り返し見返すことはありませんでした。

 

答案作成方法(筆記試験)

以下の手順で情報整理をします。

・本文を読みながらキーワードに下線を引く(本文、問題文ともに)
・本文や問題文の余白に連想したことをメモ
・設問の要素に対する解答の要素を整理
それぞれの設問の余白などにキーワードや書くことをざっとメモできれば、あとはそれを使って文章化するだけです。


制限字数に合せて文章化するにはある程度数をこなすなど練習が必要ですが、目安として解答要素一つにつき20字から25字くらい使うことになります。
そのため、たとえば字数制限が100字であれば解答要素は4つか5つ含めるとちょうど良さそうだなとなります。
文章の作り方にもよるのであくまで目安ですが。

 

解答作成にあたっては以下のことを気をつけていました。

 

・結論ファースト
まず問題文に対してシンプルに答えます。
「◯◯となるリスクがある」
「◯◯を△△することが課題で、そのために◻︎◻︎をする」
それから本文ベースの根拠を付け加えます。
理由や要因はあくまでプラスアルファの枝葉なので、幹となる部分をわかりやすく書くことが重要。
特に字数制限が厳しい時、枝葉を書いて幹を書けていないと減点が大きいと思われます。
満点を狙わず、外さないということを心がけます。

 

・書いたことがすべて
行間は読まれないので「こんなことは書かなくてもわかる」は通じません。
「書いていない」ことは「わかっていない」とみなされます。
男性は舌足らずな文章になりやすいらしいので気をつけます。

 

・「問題点」と「課題」の違い
問題「売り上げが低下している」
課題「売り上げを向上させること」「売り上げを維持すること」
問題は事実の指摘で、課題は事実に対してどうしたいのかということ。

 

・外部環境適合性
「◯◯な環境なので自社の強みである△△を◻︎◻︎という形で活かす」
という方向性。
直接こういう解答をすることがなくても、意識として持っておくと全体の解答の方向性がまとまりやすいです。
各設問はバラバラではなく一連の流れになっていることもあります。

 

・問題文、本文は読み返す
根拠、制約、方向性は本文中にあります。
ある程度解きすすめたらもう一度最初から読み直すようにします。
設問の解答をしてから気づくこともあります。

 

・定義は本文に従う
「一般的に考えられる◯◯」ではなく「この事例における◯◯」を受け入れます。
特徴は本文に書かれたものを使うようにします。

 

SWOTの活用
S:強みを活用して競争優位性を築くのが原則です。
W:弱みは対策をうっても競争優位性を築けなければ競合に勝てません。「改善したいという社長の意向」とか方向性のヒントがなければ、リソースは弱みの補強よりも強みの活用に使うようにします。
O:強みと機会のマッチング。どの強みを今の環境であればどう使うかなど。
T:一般論ではなく本文中の内容を使って考えます。

 

あとは小手先の話ですが、シャーペンは0.3mmを使って線を見やすくしました。
私の時はきれいとは言えず、答案用紙のマス目は小さく0.5mmだと字がつぶれやすいと感じたので。
ただ、0.3mmは芯が折れやすいので筆圧が強い方には向いていないかもしれません。
また、同じ芯を使っていてもシャーペン自体がメーカーによって折れやすかったり折れにくかったりします。
私の場合はロットリングが好きなのでロットリングの0.3mmを使っていました。
こちらの製品は正確には0.35mmですが、0.3mmの芯を使えます。
芯はuniの0.3mmを使っていました。

 

ただ、こちらのロットリングのシャーペンは金属製で重いので軽い方がいいという方は他のシャーペンの方がいいかと思います。

 

私が使っていた筆記用具は以下の通り。

ロットリングの0.5mm。こちらは本文中のキーワードチェックなど解答作成以外で使用。芯はuniの0.5mm。
ロットリングの0.35mm。こちらは解答作成時に使用。芯はuniの0.3mm。
無印良品の定規。
・MONOの消しゴム。

 

本文中のキーワードチェックなどにはカラーペンを使って色をわけている人もいるようですが、私はシャーペンと定規だけしか使いませんでした。
このあたりは好みだと思うので、やりやすいやり方で良いかと思います。

 

直前期の過ごし方(筆記試験)

こちらは一次試験と同様です。
体調管理最優先で、事前に試験会場近くにホテル予約。

 

勉強方法(口述試験

筆記で落ちたと思っていたのでまったく勉強していない状態から始まり、TACのWeb動画を確認して、1週間でがんばって復習して臨みました。
ほとんどの人が受かるということですが、それは勉強しなくても受かるという意味ではなく、筆記試験を合格した人たちがちゃんと復習するから結果としてほとんど合格するということだ思います。
筆記試験から時間も経っているので、さすがにまったく勉強していない状態で挑んだらまずいです。

 

試験内容としては、筆記試験での事例問題について問われますので、事例の内容は頭の中で整理しておく必要があります。
私がやったこととしては、
・事例問題の読み返し
・単語カードで情報整理、知識のまとめ
・事例の企業をよくするにはどうしたらよいか提案まとめ
です。

 

事例問題読み返しについては、事例企業の特徴などを整理しながら読んでいきます。
人員構成や組織構造、立地、SWOTなど。
あとは筆記試験で問われた質問の解答についても、各学校から出ている模範解答を見比べながら自分なりの解答要素をまとめておきます。
私はTACと大原の模範解答を確認しましたが、やはり自分の中で「この問題はどう答えるべきだったのか」もやもやしていた問題については解答が各学校で全然違っていました。
おそらくそこについては正解はなくて、筋が通っているかどうかが重要なのかなと思いました。

 

単語カードについては筆記試験と同様に全体に関することと事例ごとに分類しながら作成していきました。
事例中に登場したキーワードや専門用語、それに関係する情報をまとめていきます。
口述試験では事例の内容に関すること以外にも、一般的なことを問われることもあります。
「成果報酬型のメリットとデメリットは何か」など。

 

提案のまとめについては、必須ではありませんが事例企業に対する理解を深めるためには有効だと思います。
私の場合はパソコンで入力して、最後にプリントアウトしました。
このあたりは好みだと思いますが、提案は文章量が多くなり手書きだと大変だと感じて途中からパソコンに切り替えました。
毎日考えていると新しいアイディアや気づきがあったりして、途中で追加や修正することが多いためです。

 

また、TACでの口述試験の模擬面接も受けました。
知識や考えが整理されていても口述することの難しさを体験できますし、自分に足りていないところについて質問すると対策をアドバイスをしてくれるので行ってよかったと思います。

 

口述試験はなぜやるのかという意義については、勉強をしていく中で気づくところがありました。
筆記で書けることと、口頭で即答できることの間には大きな差があります。
即答できるようになるにはいろんなことについて考えぬいておいて、理解を深めておく必要があります。
実際の診断士の業務はおそらく口頭で説明することも多いので、そういった口頭で説明することの難しさをわからせること、事例について考え抜いてほしい、ということなのではないかと思いました。

 

各事例企業ごとの改善案(口述試験

試験前に私なりに考えていた各事例企業の改善案は以下の通りでした。
私はそれぞれの業界について詳しいわけではないので思いつきの部分で現実的でない部分もあるかもしれませんが、「なんとかこの会社を良くしよう」という姿勢で考えるようにしました。

 

事例1
ニッチ市場では競争を回避できるだけではなくコスト面やリソース面でもプラスに働く。
複数事業を手がけることで範囲の経済性が働き、固定費が分散される。
共通固定費の負担が減ると、その事業の損益分岐点が下がり、景気の変動に強くなる。
その結果、生存しやすい企業になる。

 

中途採用がメインだと平均年齢も高めなのではないか。
社長も大手で技術を習得してから会社を設立したということは現在かなりの高齢と考えられる。
将来のことも考えると組織の若返りも必要ではないだろうか。
研究開発であれば若手の意見も参考になることもあるのでは。
そのためには新卒祭用にも踏み切る必要があるが、現在は営業や総務は数人が兼任で行なっている状況。
また、即戦力の中途採用を中心としているということは社内の教育制度があまり整っていない可能性もある。
今後の新卒採用と社内での能力開発を考えると、専任の人事担当者が必要ではないか。

 

成果主義がうまくいっているというのは他者が模倣困難なA社の強みになる。
中途採用ばかりでは組織風土が変わっていく懸念もある。
組織風土に対する理解や、そこに馴染める人材育成を考えても新卒採用はメリットがありそう。

 

事例2
競合の駅前のホテルはチェーン店なのでコスト面ではB社は不利。
価格勝負ではなく付加価値で勝負することが前提となる。

 

対外的なアピールとしては、ホームページを作ったもののそれを誰が更新していくのかなどは書かれていない。
また、SNSのアカウントを作成してユーザーとコミュニケーションを取れるようにしたり、四季折々の庭の様子や朝食の写真を載せるなども考えられるので、ITに強い人材の採用や教育をしても良いのでは。

 

周囲の飲食店との連携でチャンスがある。
飲食店と旅館は競合ではなく協力関係になれる。
たとえば、飲食店に旅館のポスターを貼ってもらったり、何らか紹介をしてもらって、旅館側は紹介元の飲食店にいくらかキックバックするようにしたらwin-win
夕食も仕出しで対応しているが、どこかの飲食店と提携して、その飲食店でのコースを紹介するなど飲食店との抱き合わせプランを作るのはどうだろうか。旅館ではその飲食店での食事券を宿泊客に渡して、宿泊客はそれをもって食事に出かける。

 

外国語の社員教育をしているが、パートが4名いるので、インナーマーケティングを考えるとモチベーションの向上も期待できてよさそう。
楽しく接客できるよう言語スキルに加えて、宗教上のタブーなども考えられるので海外の文化についても社員教育を行う。

 

事例3
工業団地の強み。
* インフラが整っている
* 業務連携しやすい
* 技術交流や情報交換がしやすい

毎日引き取られるのが500個くらいなのに在庫が常に1000個以上あるので在庫管理費用が無駄。
生産計画をたてるときに在庫も考慮してつくる。

 

多品種少量に対応するには、機械を汎用機にして、機械のレイアウトを機能別レイアウトにして、人も多能工化する。

 

短納期化に対応するには、すでにロット生産で在庫から出荷しているので、やるとしたらITシステムを導入して情報連携を密にして製造以外の部分で納品リードタイムを短縮するとかか。

 

プロモーションとしてはプラスチック射出成形の強みを対外的にアピールしていく。
ホームページでわかりやすい解説動画をのせたり、技術展みたいな展示会に出展してみたり。

 

事例4
販管費が大きい。
とはいえ、中身は本社費・共通費が7割くらい占めている。
本社がお金を使い過ぎなのではという気がするが、ここはD社単体でどうこうできるところではなさそうなので諦める。
販管費率を下げるには、売上高を上げることを考える方が現実的。

 

売上高向上の案としては、一つはプロモーション。
事例2の内容みたいになるけど、インテリアコーディネートをしているのであれば、SNSに施工した部屋の写真を掲載するなど。

 

現場における工夫はすでに全社的に共有しているという記載があったので、それをまとめてマニュアル化して個人業主への指導などに使えるのでは。
ITシステムを導入して事業主とのコミュニケーションを効率化したり、情報連携を密に行うなどが有効では。

 

有形固定資産回転率が悪いので向上させたいが、建物と土地が現在どう使われているのかわからないので具体的な改善案を出すのは難しそう。

 

労働集約的な業務だが、人材確保が難しい時代なのでいかに人手をかけずに売り上げを伸ばすかという観点が必要。
人件費の削減を考えるとIT化が考えられる。
初期費用がかかるけど、点検サービスで人でなくてもできるものはセンサー機器を導入して自動で検査するようにするなど。
また、人であれ機器であれ、結果のデータをデータベースに蓄積させて活用するなど。

 

 

最後に

試験勉強は大変とはいえ、資格試験は入り口に過ぎないので、まだまだこれからが勝負だと思っています。
また、1年間休日を潰す生活だったので妻にはいろいろ我慢してもらったり、協力してもらったりすることがあり、感謝しています。